染織家、志村ふくみの作品も買取中

染織家、志村ふくみの作品も買取中

志村ふくみは農村の手仕事に使用されていた紬織りの着物を芸術の域にまで高めたと評され、紬織りの重要無形文化財保持者にも認定されています。

その作品は古くから伝わる平凡な縞や絣といった文様に、植物染料による染め糸を組み合わせることで庶民の普段着と言う概念を超えて、新たな世界観を作り出すものとなっています。
志村ふくみが作り出す紬織りの着物の特徴は、野山や草木などの自然界の植物を利用して採取した染料による色彩の豊かさです。

志村ふくみ自身が「草木の抱く色を頂く」と表現しており、自然との純粋な向き合い方が現れる紬織りの着物となっています。

志村ふくみの作品には源氏物語をインスピレーションとしたシリーズがあります。

それぞれの作品には源氏物語の題名を元にしたタイトルがつけられており、物語の情景を紬織りの織り柄で表現されているのです。
『薄雲』と題された作品は、光源氏の初恋の人がなくなった悲哀の中で詠まれた和歌が背景にあります。白や茶色、紫などの色彩が山々にたなびく薄雲と夕日のコントラストを演出しており、光源氏の心情を紬織りに染め込んだ作品です。さらに、緑や藍色の糸が組み合わされていることで抽象的で深みのあるものに仕上がっています。この豊かな色彩の表現と、紬織りの着物という素朴さや温かみの組み合わせが、志村ふくみの作品の大きな魅力だと言えるでしょう。

『若菜』は生命力あふれる鮮やかな緑色が特徴的で、縦横に交える文様が題を表しています。絣の表現は古くから紬織りに使用されてきた伝統的なものですが、新鮮なデザインに昇華されています。伝統的な文様の扱いや背景を作品にみることができるのも魅力のひとつとなっているのです。
その他にも源氏物語には様々な心情の変化や複雑な関係性がストーリーとなっていますが、志村ふくみの作品はどれも巧みにその情景を表しています。これは志村ふくみの表現豊かな色彩の知識と技術があるからこそできる芸当だと言えるでしょう。